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明君の言葉に、私は眉を顰めた。
強がって彼を睨みつけているけれど、内心は怖くて仕方がない。
「…秋君!」
床に倒れている秋君に気づいた。
ピクリとも動かない。
まさか…
「秋君に、何をしたの!?」
「大声で叫ばないでくれます?心配しなくても、秋先輩は気絶しているだけですよ」
明君は迷惑そうな顔を見せて、私を押しのけ、教室を出て行こうとする。
「待って」
教室内から、私はその華奢な背中に向かって投げかける。
「…ねぇ、どうしてこんな酷いことをするの」
「……」
「どうして私達を選んだの?私達に何か恨みでもあるなら…」
「恨み?そんなもの、ありませんよ」
「だったら、どうして!」
「死にたがりのくせに」
私は息を呑んだ。
明君は振り向き、口元に薄く笑みを浮かべる。
「だから僕は選んだんですよ。僕が選ぶ参加者達は皆、死にたがりの連中なんですから」
「…っ」
彼は軽い口調で言う。
「そんな人間をこの世界に集めて、僕のルールに縛られたゲームに参加させる。最後には皆怯えながら、口を揃えて言うんです、死にたくないって」
彼は可笑しそうに笑い声を上げた。
そして嫌な笑みを浮かべて、言葉を吐く。
「その瞬間を傍観するのが、最高に面白いんです」
私は唇を噛んだ。けど、何も言い返せなかった。
この少年には、きっと何も伝わらない。
こんな酷いことを平然としてしまう人間なんて、人間じゃない。
こいつは、人間じゃない。
扉が閉まる。
私は1人、怒りをぶつけることも出来ずに佇んでいた。
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