王の花嫁

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すぐに浮かんだその名前を聞いてしまってもいいものなのかもわからない。 私が知れば、ジャックさんとそういうお話をする機会があれば話してしまいそう。 でもどうしてもナタリーさんが浮かぶ。 王様に一番近い侍女。 「そういえば君のほうこそ、ジャックとのことはいいの?」 ジャックさんのお母様のことを考えていると、思い出したかのように王様が聞かれた。 なにを思うでもなく、どうしても私のその過ちを浮かべる。 ジャックさんが親切にしてくれたことを思い出すと、私はひどいことをしているのかもしれない。 けれど、きっとジャックさんならわかってくれると思う。 私は王妃となるためにここにきた。 王様の子供を産むためにきた。 人質でもなく、王様にかわいがっていただけるように。 ジャックさんはモニカさんをきっと受け入れてくれるから。 私には王様だけでいい。 「王様が会ってくださらなくなれば浮気するかもしれません」 とは言わせていただいた。 私に親切にしてくれる、近いところにいる男性はそんなに多くもない。 兵士も城に戻るとほとんど関わることもない。 「私に浮気をさせないように、王様の夜は私だけのものにしておいてください」 私は続けてそう言わせてもらった。 他の女性に手を出さないで、私だけでいて、と。 とてもとても大それたものだけれど。 望んでもいいのだと思える。 今は私しか王様の妃はいないから。 「君の夜が僕だけのものになるよ?」 王様は言い替えるように仰る。 私は頷く。 それは当然のこと。 「セレンディにも王様の添い寝はさせてあげません」 それを言うと王様は笑った。 その笑顔がとても自然で素敵。 「君の部屋へいかないからセレンディになかなか添い寝してもらえなくなったよね。……ここは王の居住区だけど、君の部屋もここに持ってくればいい。すぐ近くで僕の浮気を見張っていればいい。君に子供ができて、その人数が増えてきたときにまた居住区を考えようか」 誰かの部屋へ王様が渡られたら、私がすぐわかってしまう場所。 それでいいとされることに、私は頷かせていただいた。 王様はあてがわれない限りは、なかなか女性に手を出されることはなさそうだけど。 信じる。 だから、私もすぐおそばにいて信じていただく。
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