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お父様が援軍に入られればすぐに終わると思ったのに、戦は思ったより長く続いた。
城を脱出してから7日目、その戦はケビン様を王様が討たれたことで終わった。
すぐに城に戻る、なんていうこともなく、私はせっせと砦で洗濯物。
今日はよく晴れているからすぐに乾くだろう。
砦の上まで洗濯物を運んで、侍女たちと一緒に一気に干していく。
城の侍女がこちらの砦に集まってきて、なにかここが城だったような錯覚もたまにする。
民は戦が終わったと聞くと城下へ戻っていった者も多い。
「アニエス様、お食事の用意が整いました。作業は一端休まれて、お食事を先におとりください」
一仕事を終えたと清々しい汗を手の甲で拭っているとそんな声をかけられて、私は食事にいく。
皇太后様が一緒にと仰るから、この時間ばかりはずらすことができない。
席につくと怪我はもう治ったミミさんがお世話をしてくれる。
モニカさんはまだ背中の傷は完全には治っていなくて、痛みがあるうちはおとなしくと私が仕事をさせていない。
セレンディのお世話という仕事はしてもらっている。
あの子もよくこんな戦があったのに生きているものだと思う。
片目が開かないのに強い子だ。
「アニエス、まだこちらにいるのですか?」
「はい。まだ痛みに苦しむ兵がいますので。私の侍女であるモニカさんの休養もこちらのほうができると思えますし」
「療養所となる施設が新しくほしいところですね。城下の復興のついでに建てるようにオリビエに言ったほうがいいかもしれません。長く病や怪我を患う者たちが安心して治療できる施設。よくはありませんか?」
「悪くはありませんが、こちらの砦でじゅうぶんだと思うのです。このあたりは静かですし、城下に建てるよりはゆっくり休めると思うのです。不便さはありますが、城下に建てても悪い病が蔓延してしまうことがあるかもしれません」
「そうね。うーん…。ここはだけど、あなたには通いにくいところではありませんか?」
「それはあります。ですから城にもすぐに戻れないのですが。…今戻っても多くの遺体を見るような気もするので、もう少し落ち着いてからがいいと思われます」
遺体だけでもなく、その流れた血の跡や戦の名残と思えるもの。
雨が降ったあとなら一度王様にお会いするために戻るのもいいかもしれない。
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