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私が生まれたのは小さな領土の国王のもと。
上には兄3人、姉6人もいる10番目の末っ子。
小さい国だけど子沢山な王家。
私の母親となる人は5番目の妃。
お父様である国王様にもお母様であるお妃様にも、ほとんど会うこともなかった。
会っても特に会話もなくて、なにかプレゼントをくれてお茶をして、私のまわりの侍女と話すだけ。
私にとってのお母様は侍女のメアリーだった。
乳母は私が物心つく前にお城勤めを辞めてしまって、そのあとからずっとメアリーが私のお世話をしてくれた。
そんな私も生理もきて胸も膨らみはじめて、女というものに見えてきた12才。
結婚することになった。
姉は16と17だったから、まだまだ先の話だと思っていたのに。
ほとんど会うことのないお父様とお母様に呼ばれていってみると、笑顔で言われた。
おめでたいことらしい。
だけど私には結婚するというのがどういうことなのか、よくわかってはいなかった。
わかってはいないけれど、お姉様たちを見てきたからわかっていることもある。
私はこの国から出て、他の国にいくことになる。
「よろしいですか?アニエス様。殿方とベッドに入り、子を成すことがこれからのアニエス様のお勤めとなります」
メアリーのそんな性教育もされる。
今までは言葉遣いや礼儀作法やダンスといった教育しかしてもらってない。
メアリーはどこかの画家が描いた裸の絵を見せて。
男女の違いや、子を成すのにどんなことをするのかなんていうことを教えてくれる。
真面目に話してくれるから、私も真面目にお勉強。
男性を喜ばせる方法、子を成すのに必要なことなどなど。
恥ずかしいお話のようにも思うのに、メアリーはまったく恥ずかしがらないから、私もそういうものなんだということにしている。
私の勤め。
ただ、それだけのこと。
あとは結婚することが他にどういうことなのかというお話。
「アニエス様はまだ婚約者のオリビエ様とお会いになってはいませんね」
会ってない。
顔も知らないし、何歳かも知らない。
名前だけは聞いた。
私の嫁入り先として、いいところを見つけてきたと言わんばかりにお父様とお母様から聞いた。
いいところなのか、悪いところなのかも私にはよくわからない。
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