王の花嫁

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だけど、と考える。 先の王様がオリビエ様を後継者としたこと。 先の王様がオリビエ様に望んでいらっしゃること。 ケビン様は戦をされるだろう。 オリビエ様はされない。 それは先の王様もわかっていらしたように思う。 「王様」 「……わかってるよ。兄上に国を任せてしまったほうがいいんじゃないかという迷いはいらないこと。兄上が攻めてこられた。僕は兵をあげて兄上を討った。兄上はそれでいいと仰りそうなこと。……わかってる。僕が自分で王座を取り戻した」 王様はご自分が王様でいらっしゃることをわかっていらっしゃる。 私も城に戻ってきたばかりよりも、その王様のお心を理解できたようにも思う。 あのときは亡くなった兵の命を考えていたけれど。 今はケビン様のお命を考える。 王様がなにを思って、ケビン様に討たれてもかまわないとされそうになったのか。 拳だけで戦って命を奪おうと考えられなかったのか。 王様でいたくない。 そういうことだろう。 私はなにも言えなくなって、起き上がると、ぎゅうっと王様に抱きついた。 ぎゅうっとぎゅうっと、強く抱きしめて、私の小さな腕でもそのお心を包めるようにと願う。 「きっとマリー様がここにいらっしゃれば、王様を叱咤激励されていそうです」 嫌いと言いながらもマリー様なら王様を認めてくださるはず。 王様を怒るのだけど、王様に怒ることができる人はマリー様くらいだろう。 「確かにこんな話をマリーに聞かせたら怒りそうだね。情けないとでも言われそう。それでも兄上を討ったから少しは誉めてくれるのかな。……僕の最初の妃、そういう役目だったのかな」 王様は私の背中を軽く抱き返して仰る。 確実にそんな気がする。 先の王様が考えられた婚姻。 王様が手放されたのだけど。 カトリーヌ様も王様に意見を突きつける方だった。 だけど、きっとマリー様がいらっしゃれば、カトリーヌ様も王様を裏切るようなことはされなかっただろう。 「私、マリー様のようにはなれそうにありません」 「うん。なってほしくない。君は民から慕われて僕を癒してくれればいい」 私の役目はそうなのかもしれない。 王様を慕っていること。 なによりもそれがそういう立場にしかなれそうにない。
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