王の花嫁

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「……それでも。だから…、王様。もっと愛して。私を」 かわいがっていて。 そして、私のために国を捨てないで。 私が王様に願えるのはそういうこと。 先の王様がオリビエ様に託された。 他国との戦を望まれるでもなく、国内の勢力に奪われるでもなく、平和に国を治めていられるように。 「シェリーを迎えろと言ったり、愛してと言ったり、君は忙しいな」 繰り返しになっていることに呆れたように王様に言われて、自分でもそう思う。 だけど。 シェリーさんは王様に近づけてはいけないのだろうと私の考えはかわった。 愛される役目を奪われてはいけない。 私も愛して、なんて、王様はそんなに器用な方でもないからできない。 私は王様から少し離れて、そのお顔を見させていただいた。 王様も私を見てくださって、その手のひらが私の頬にふれて、その目が細められる。 「叱ってくれるのは今はまだナタリーがいるから。政治的なところだとジャックがいる。男としてどうか、という叱りはもらえないんだけど、君にはそこを叱られたくないかな」 「王様は素敵な方です。もしも王様を辞められるときは私も連れていってくださいね?」 私の役目で言ってみると王様は笑われた。 「討ち死にしなければ、僕は王を辞めたりしないよ。兄上に任されたんだから。地方領主くらいでいたい…なんていう逃げたくなる気持ちは少しだけ許して。逃げないから」 「では子供をがんばってつくりましょう。その王妃の名誉は王様にしか与えられないのです」 かわいがられて、かわいがられて、愛されていれば。 きっといつかはできるはず。 王様の後継者は私がつくる。 そのために私はこの国に嫁いできた。 メアリーに教えられた。 私の嫁入り教育。 「なんか、やる気だね?……シェリーのことはもういいの?」 「はい。やっと理解できたので」 「賢いね、君は。いつまでもずっと言われ続けることになるかと思ったのに」 「シェリーさんが大きな裏切りを働いてくださったおかげもあると思います。それもケビン様の嫁になったからかもしれません。先の王様は先見の明でも持っていらっしゃったのでしょうか?」 すごーく立派な王様だと思う。 生きていらっしゃるうちにお会いしたかった。
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