第1章

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メッシュの水泳帽をかぶった小さい頭を撫でてやると怒られないと安心したのか、 強張っていた体の力を抜いて俺の首に絡みつくように抱きついてくる。 「はぁい」 (おおっとぉ。 こりゃ?将来小悪魔系かぁ?) ちゃんと相手の顔を見て甘えてくる仕草は女の天性かも知れないなと思う。 プールサイドまで送ってやろうと長谷川さんのいる方へ歩きだすと耳元で女の子が 「あ。 ママ」 と言って指差した。 「え?」 「アレ、 あそこにママがいるの」 「あ…」 振り向いた俺に気付いた母親が会釈をしながら抱かれている娘に心配げに目をやる。 俺は仕方なく長谷川さんに背を向け、 プールサイドに立つ母親の元へと歩いていった。
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