第1章

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「なにニヤついてんだよ、 気持ち悪いな。 もしかして貴弘、 泳げないのか?」 「え? いや、 別に。 泳げるよ、 そんな上手くないけど。 筋肉質だから浮きにくくてね」 「あぁ、 そうだろうな」 彼がクスリと笑った。 嬉しそうに。 (あ。 今、 想像したな?) 昔、 学生時代に陸上競技の槍投げをやっていた俺は、 自他共に認める 『イイ体』 の持ち主だ。 就職してからも週に数回ジムに通い、 その体をキープしている。 通勤時、 地下鉄で偶然美大で塑像(そぞう)を専攻する長谷川さんと出会い、 モデルを頼まれたのが俺達の馴れ初めだ。 お互いに一目惚れだったと思う。 俺は彼の美貌に、 長谷川さんは俺の体に。 最初は見てくれに惹かれた二人だが、 まぁ、 この一年ちょっとでいろいろと愛情の深さを思い知る出来事があったりして…今じゃ心身共にラブラブだ。
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