第1章

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初めはモデルを頼まれたことに戸惑っていたが、 芸術系に疎い俺でも長谷川さんの才能は見て取れた。 緻密でありながら生命の息吹を感じさせる彼の作品。 俺の完璧なコピーを作って見せた彼がどれだけ俺の体に惚れ込み、 執着してるか。 そう…それは昨夜のベッドでも十二分にわからせられたコトだ。 (なかなか離してくれなかったもんな…ゆうべ) 彼の姿態がまだ瞼に残っている。 小柄ながら柔らかい筋肉に覆われた体、 まるで猫科の肉食獣のような。 幼い頃を台湾で過ごした彼は本場の中国拳法を学び、 その中でも太極拳だけは今でも毎日続けている。 既に師範の腕前なんだそうだが、 自ら選んだ芸術の道を全うしたいからと、 今は趣味に留めていた。
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