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エドワードはソファーから立ち上がると、煙草をくわえたまま、自分の机に向かった。机の下部の引き出しから、大き目のポーチを引きずり出すと、腰に巻き付け、出かける準備を整える。
「さて、最初は誰の元へ向かいますか?なるべく急いだ方がいいですね。死告鳥の輩だって、彼らを狙っているかも知れませんので」
エドワードが捲ったコートを下ろしながら聞いた。
「じゃあ、まずは『セシール・ド・アルバネル』という聖職者を訪ねましょう。居場所は『マルス』という街の『アルバネル大聖堂』。ここから1番近い距離です」
「決まりですね。目的地までは結構な距離があります。念のため、これを所持していて下さい」
ソファーに戻ったエドワードは2つの道具をエリスに渡した。彼女に対してサイズが合ったフード付きのコート。それと見事な装飾が施された黒いボトルネックレス。
「あなたはこの国では、立派な指名手配犯です。道を歩く際は必ずフードを被るのを忘れないように」
「このネックレスは何ですか?」
エリスが聞いて、返答がすぐに返る。
「それは『レクレアティオ』といいます。『錬金術』で作った治療薬です」
「れ、錬金術・・・・・・!?」
「はい。騎士団が持つ技術の1つです。気になる詳細はまた今度にして、今はこれについての説明をさせて下さい。この秘薬は多くの素材を調合して作られた物で怪我を負った際、飲むと即座に傷口が塞がります。僅か1滴でどんな致命傷にも対応できます」
エリスは真剣に頷き、薬瓶に付いた細い鎖を首にかけ身に着けた。そして、気が早く変装用のコートも羽織りそれを整える。
「よく似合ってますよ。衣装で怪しまれる事はまずありませんね・・・・・・して、さっきから気になっていたのですが、個性的なピストルをお持ちですね?護身用の武器ですか?」
エドワードはあるピストルを気に留め、指さす。それはエリスの恋人であるジャンが演説会場でジリアンを撃ったリボルバー拳銃だった。
「ふむ、『モーゼルM1878』・・・・・・ドイツ製の代物ですね」
エドワードは銃の種類を鑑定し、手に取ってシリンダーを取り外した。6つの穴を見て1つだけ空薬莢が入っていることに気づく。
「ジャンがそれでジリアンを撃った後、私の手に握らせたんです」
「ジャン?名前を知っているという事は知人か何か?」
エリスは堂々と肯定的に答える。
「ええ、私の恋人でした。1年前までは・・・・・・今は死告鳥の大幹部です」
「・・・・・・なるほど」
エドワードは大して驚いた素振りを見せず、シリンダーを元の位置に戻す。大していじらなかったピストルをテーブルに置いた。
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