78人が本棚に入れています
本棚に追加
「大変だわ・・・・・・これ以上の最悪な展開はない!」
「まあ、私の推測が本当に当たっていればの話ですが」
とエドワードは動揺せず、実に冷静な態度で2本目の煙草を満喫する。
「そんな事になったら、大勢の人が死ぬ!戦争が始まる前に早くどうにかしなきゃ!」
エリスは焦りをきたしながら、テーブルに置かれた貴重品を回収し、写真を胸ポケットにリストはポーチに入れた。最後に拳銃をしまう。ソファーから立ち上がり、渡されたばかりのコートに付いたフードを再び被る。
「一刻も早く、マルスへ向かいましょう」
エドワードもエリスから視線を逸らすと、スーツの下に隠していたホルスターから1丁の拳銃を取り出した。銀色に輝く44口径のシングルアクション式のリボルバー。
「美しい銃ね。武器は嫌いだけど」
エリスが淡々と言った。
「私の良き親友です。父の形見でもあり、色々な思い出がこもった大切なお守りと言うべきでしょうか?」
自信に満ちた口調で答え、大口径の弾丸をシリンダーを回してはめ込んだ。
「では早速、マルスへと向かいましょう」
「ええ、こうしてる間にも死告鳥は次の陰謀計画を進めてるだろうから」
「目的地への近道を知っています。狭い路地裏ですが、そこを通ればすぐに辿り着けるはずです。急ぐとしましょう」
「また、路地裏を通るの?」
「また?この街に来る際にも通って来たのですか?」
エドワードは目を丸くして問いかけた。
「ええ、そこで物乞いの男と出会い指輪を貰ったの。奇妙なオーラを放った変わった人だったわ」
エドワードは詮索せず、エリスの先を行き扉を開け外の廊下へ足を運ぶ。彼女も気力をふるい、緊張を押し殺して後に続く。
「エリスさん。出かける前に1つだけよろしいですか?」
出発の直前に彼はエリスに聞いた。彼女は背の高い男を見上げ、無言のまま首を傾げる。
「先ほど耳にしましたが、死告鳥にはかつての恋人がいるのでしょう?あなたは、その男を殺せるのですか?」
「・・・・・・ジャンはもう恋人ではない。ただの支配欲にかられた殺人者、そして私の人生を狂わせた張本人。今なら何のためらいもなく殺してみせるわ」
堂々と返答を返す彼女からは強がりが見え隠れするが、その覚悟に偽りを感じさせない。冷め切った好意を捨て、激しい憎悪に聖刀のグリップを力強く握りしめる。かつての愛人を愛人と思わず、許すつもりは更々ないようだ。
「期待通りの返答に深く安心致しました。では、出かけるとしましょう。街中では決して、フードを外してはいけませんよ?」
2人は階段を降り下へ向かう。エドワードはすぐには扉の取っ手を回さず、覗き窓に目を当て街の様子を窺う。大丈夫そうだと後ろに確認を知らせ、2人は外に出た。
最初のコメントを投稿しよう!