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晴れる気配のなかったさっきまでの雨は見事に止んでいた。空はまだ灰色に曇っているも、滴は1滴たりとも落ちてこない。さっきまで無人だった街に人間の姿が現れ、外での生活を再開している。
人の数が増えるばかりの街中をしばらく歩き続け、ようやく裏路地の前まで辿り着く。巡回していた兵士もいたが、エドワードが隣にいたお陰か、特に怪しまれなかった。そのまま、目的地に続く近道へと足を踏み入れる。
「・・・・・・ありがとう、エドワードさん。何とかバレずにここまで来れたわね」
「よく頑張りましたね。それでこそ騎士団の一員です」
エドワードは自分の娘を褒めるような口調で優しく微笑んだ。
裏路地に入ってから結構な時間が経過した。まだ出口は見える兆しない。いくら近道とはいえ、隣町まで徒歩で向かえば、それなりの時間は掛かるものだ。
「・・・・・・ねえ。聞きたい事があるんだけど?」
あれからずっと、黙っていたエリスが半時ぶりに口を開いた。
「そろそろ、退屈になってきた頃合いですか?質問なら遠慮なくどうぞ」
「アビーさんについて教えてくれない?」
「アビー様がどうかなさったのですか?」
エリスは"何となく"とだけ理由を述べて
「あの人が南北戦争の英雄なのは、さっき探偵事務所で聞いたけど、あの人はいつ、ルーヴェルの騎士になったの?」
エドワードは短くなった煙草を落とし、踏みにじると"やはり気になりますか?"と退屈しのぎの要求に応える。
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