第2章 外の世界へ

11/34
前へ
/56ページ
次へ
「確かにアビー・クリステンセンはアメリカの戦争で名を上げた英雄です。数千にも及ぶ銃兵を刀で斬り捨てましたが、最初から活躍していたわけではないのです。剣技の心得があったあの方も最初は無残な戦場に恐れ戦き、身動きが取れなかったらしいですよ。そんなある日、アビー様は戦場の跡地に潜んでいた敵兵に狙撃されました」 「狙撃・・・・・・確か、アビーさん本人から聞いたわ」  探偵は小さく頷き、改めて続きを話す。 「致命傷を負い数週間もの間、生死の境を彷徨っていた際、そこへアメリカに支部を持つ騎士団が現れたのです。騎士達はアビー様に霊水を飲ませる事で尽きる寸前だった命を救い、組織への加入を申し出ました。最初は混乱したアビー様でしたが、長い説得の末、頼みを承諾して再び戦場へ立ったのです。その時から彼女は鬼神のような猛者へと変わりました」 「それがアビーさんがルーヴェルの騎士の一員のとなったきっかけ・・・・・・」 「気になっていた事を知れて、心が晴れましたか?」 「ええ、信じられないくらい壮絶なストーリーね・・・・・・」  エリスは驚愕を隠せない口ぶりで感想を述べた。 「アビーだけではありません。騎士団は様々な歴史の至る所で活躍してきました。もっと会話を満喫したいところですが、今は目の前の仕事に集中しましょう」  またしばらく歩いて、別れ道が現れる。エリスは、どの道を選ぶかで困惑したが、エドワードはすぐさま、右の道を指差した。聞いたところによれば、その方向で間違いないらしい。 「なら、早く行きま・・・・・・」 「しっ!お待ちください・・・・・・」  突然、エドワードがただならぬ様子で人差し指を鼻の手前に運んだ。鋭い目で全ての方向を警戒する。 「どうしたの・・・・・・?」  エリスも表情を変え、おそるおそる聞いた。狭い空間は2人の声以外、何も聞こえない。そのはずだが・・・・・・ 「エリスさん。ゆっくりとです・・・・・・静かにその聖刀を抜いて下さい・・・・・・」 「・・・・・・え?」 「言う通りにして下さい・・・・・・」
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加