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エドワードは尾行されていないか、再び背後を睨んだ。すぐに正面を向き直ると、コートに手を入れピストルに触れる。恐怖を覚えたエリスは静かに聖刀のグリップを握りしめ、静かに銀の刀身を抜こうと・・・・・・その時だった。
「危ないっ!」
エドワードはいきなり声を張り上げ、エリスを前方に突き飛ばすと、自身も後ろへ下がった。2人が立っていた位置に無数のナイフが降り注ぐ。エリスは、驚いただけで何が起きたのか分からなかった。急いで立ち上がり武器を構えエドワードの方を向く。
「敵襲のようです!敵に囲まれないよう、互いに背を預けましょう!」
エリスは慌てて前に振り替え、エドワードは後ろ姿を彼女の背に合わせ、何もない方向へ銃を向けた。自分達を狩ろうとしている敵がいるはずなのに恐いほど気配を感じない。
「!」 「!」
ふいに、真上から風になびく音が聞こえ無数の影が現れ、地面に降り立つ。現れた全員が胴体に甲冑、羽織ったマントをなびかせている。赤い色の包帯が顔に巻かれ素顔を隠していた。
「演説会場を襲撃した奴ら・・・・・・!」
エリスが目つきを鋭くし、聖刀を構える。
「やはり、跡をつけられていましたか・・・・・・」
まんまと不意打ちを許した失態にエドワードも歯を噛みしめ、いつでも撃てる銃口を彼らに向けた。
「こんな汚らしいネズミの道を通って、どこにお出かけだ?騎士団のクズ共」
先頭に立った暗殺者が前に出て言った。相手の武器を怖がらない余裕の態度を見せる。
「おい?こいつ、演説会場にいたガキじゃないか?幹部に罪を擦りつけられた奴だよ」
後ろにいた暗殺者の1人が指を指さずに言った。
「まさか、生きてたとはな。警備隊に射殺されてたのかと思ったぜ。やはり、女の執念と悪運は恐ろしい」
その発言に暗殺者達は一斉に大笑いした。悪意のある目つきが包帯の中から窺える。エリスは悔しそうにキッとその集団を睨んだ。
「挑発に乗ってはいけません。冷静さを保ち、落ち着いて下さい」
エドワードは小声でエリスを宥めた。彼女は刃の先端を向けたまま、緊張感を抱く。
「せっかく生き残ったのに可哀想だが、嬢ちゃん。ここがお前の墓場だ」
先頭の暗殺者が面白おかしく言い放って、腰に差してあった長剣を抜いた。それを合図に、後ろにいた仲間も次々と武器を手に取り始める。剣を抜く者、銃を構える者、かぎ爪を両手にはめる者。彼らの形相は殺意へと一変していた。
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