第2章 外の世界へ

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「なるほど。グロリアを暗殺し、更にはジェームズを仲間に加えた上でジャンヌに繋がる手掛かりをも入手する。"一石三鳥"というわけですか。流石、英雄の策略というものは、私の考えなど足元の影にも及ばないような広い発想で溢れておりますね。あなたには、敬服させられるばかりです」 「エドワードの言う通りよ。この任務の成功ほど、騎士団にとって朗報な事はない。特に軍艦の入手は組織への大きな戦力となる。エリスのためにもなるわ」 「え?私のため?」  エリスは"どういう事か?"と事情の説明を求めると 「あなたはこの国では指名手配犯なのよ?普通に街を歩き、一般の船に乗れば、あなたの無実を知らない人々に目をつけられる危険が常に付きまとう。これからはジェームズの軍艦に乗って、他国への任務へ出向いてもらうわ」 「とにかく、急ぎユピテルへ向かい、ジェームズ・リンカーンとの接触を果たした方がいいかと。彼がジャンヌの手掛かりを握っているのだとしたら・・・・・・当然、彼の身に危険が及びます」 「そうね。手遅れになる前に一刻も早く、彼を騎士団の保護下に置いた方が得策ね。今回の作戦も失敗は許されない」  エドワードとアビーは敵側の動向を推測し、意見を統一させる。 「明日の早朝、私とエドワードはユピテルの街に向かうわ。そこでジェームズを探す。まずはジャンヌの手掛かりを得る事が優先事項よ」  エリスは目的地が記された地図に人差し指を置くと、自身を慕う仲間に対し、交互に視線を送る。 「あの・・・・・・何か私にお役に立てる事はありますでしょうか?」  セシールも力になりたい一心で助力を申し出るが、アビーは頭を縦に振らなかった。 「その親切心は心強いけど、これは"ただの人間"に成し遂げられる問題じゃないわ。あなたの力が必要になる日が来るまで、まだ、ここで待機していなさい」 「仰せのままに・・・・・・」 「さっき、私が"協力者"の話をした事は覚えているわよね?"デズモンド・コルドウェル"。騎士団に所属するエンジニアで兵器学のエキスパートよ。彼はユピテルの酒場『シー・オブ・サンセット』の地下室を隠れ家にしていて、次世代の武器の開発に明け暮れている。会えば、力になってくれるかも知れないわ」 「分かりました」 「異論が他にないなら、これで会議は終了するわ。明日は最も重要な戦いの当日となるでしょう。しっかりと気を引き締めていきなさい」
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