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ゆうき君は真っ青になって、男から逃れようとしている。目線は、男が持っている刃物に釘付けになっていた。刃渡りが長い包丁が、ゆうき君の腹から数ミリの場所をうろうろしていた。
どうしよう。
ぼくの頭は鈍い回転を始めた。
このままだと、ゆうき君が刺されるかもしれない。
ゆうき君がタイミングよく刃物から逃れられる確率は少ない。なぜなら、片手は帽子の男に掴まれ、片手はトートバッグを提げているからだ。バッグで応戦できないか? しかし、今のゆうき君は声も出せないくらい怯えているようだ。レジの女の子は煙草の棚に背中を押し付けて震えているだけだ。
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