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「優しい嘘ってなんだよ!」
どこか諦めたような遥の言葉にいらっとして、つい声を荒げてしまった。
遥はびくっと肩を揺らすと俺をじっと見つめる。
「俺はお前の外見がどうだっていいよ」
「いいよ、聞きたくない」
「俺は、」
そう言いかけて、言えなくなった。
遥に口を塞がれたから。
さっきのプリクラの時より長い、
触れるか触れないかわからないキスじゃなくて
ちゃんとしたキスだった。
そのまま離れると、お互いに見つめ合う。
遥は少し照れ臭そうにして、頭を振ると隣のブランコにまた腰掛ける。
「言わなくていい、さよならだから。」
足で砂に さよなら と書きながら遥が呟く。
「俺の気持ちは?そういうことをするくせに、言わせないのはずるいだろ?」
「わたしのことは忘れて、俊には幸せになって欲しいから」
そう言った遥は泣いていた。
遥は昔から男っぽくないし、華奢で女の子みたいだったけど、
泣いたところを見たことはなかった。
なにを言われても泣かなかった遥が泣いている。
何も言わずにぽろぽろと涙を流してじっと下を向いている遥を見ていると
抱きしめたい、栗色の髪を撫でたい。
と、またあの衝動に駆られる。手を伸ばそうとしたその時、遥が顔を上げた。
「帰ろ、ごっこはおわり。」
そう言って立ち上がった。
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