1.まちあわせ

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「姫奈、ここ来たいって言ってたよね?」 「おぉ……、うん!」  藤島くんが連れてきてくれたのは、待ち合わせに使っていた駅からすぐ近くの市民ホールだった。もちろん、市民ホール自体はいつだって見慣れてるし、特別来たい場所でもない。  だけど、今週はここで特別イベントが催されている。  バレンタインの週ということで、チョコの展覧会をやっているのだ。最近都内でそういうのをやったからということでほとんど便乗みたいな形だけど、何だかんだでこの街はパティスリーも多いし、そういうのを知ってもらうためにもいいんだ……とかお父さんが言ってたっけ。  で、テラスでは飲食オッケーになってるところも魅力的。  ハートを象ったモニュメントの前で、藤島くんにこの《愛情》たっぷりのチョコを渡してあげたいな、なんて思ってたりして……! 「あっ、やっぱり混んでるなぁ~」 「ん、ほんとだ」  市民ホール前は長蛇の列。やっぱりみんな考えることは一緒みたい。結局入れるようになるまで、数十分かかってしまった。前の彼氏みたいに待ち時間とか嫌いな人じゃなくてよかった……、ほっ。  無事にチョコを渡せたし、気になる感想の方は…… 「すっごい! 今まで食べた中で1番美味しいチョコだよ! ありがとう、姫奈!」 「うん!」  顔を真っ赤にして、ほんとに嬉しそうに伝えてくれた言葉。  それで、もう全部報われたような気分。 「ん、この包帯どうしたの?」  だから、あとで一緒に入ったお風呂で訊かれた二の腕の痕もすっかり報われているわけで。わたしは1日たっぷり、おうちに帰ってからはお父さんとも、バレンタインを満喫したのでした!  バレンタイン、最高だね!!
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