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雪が降った次の日。こしまり雪で真っ白に染まった道を、俺は意気揚々と歩いている。もちろん、転んだりしないように足下には気を付けて。
今日は年に1度のバレンタインデー。
まぁ、一応くれる人がいなかったわけではないけど、それでもそれは俺が好きだとかそういうんじゃなくて彼氏にあげる前の味見係とかクラス全体への義理チョコだとか、そういう感じのものばかりだった。
でも、今年は違う。
冬から付き合い始めた、稲森 姫奈。彼女は俺に気持ちを向けて、チョコを作ってくれるんだ。もう何日も前から繰り返しそれを言われているので、もう今から楽しみで仕方がない。
あぁ、どうしよう。
どうにかして俺からも何か返せればいいけど。
そう悩んでいるうちに、当日になってしまった。うーん、考えに考えてようやく思いついたのは、姫奈が行きたがっているチョコレート展覧会に行くというプランくらいのもので。
できることなら何か形に残るものをあげたいけどな。
シャリシャリと音を立てて霜の上を歩くのは何となく気分がいい。もう子どもじゃないのに、つい優先的に霜の上を歩きたくなってしまう。音もそうだし、踏みしめたときの感触も……。
うわ、そんなこと言ってたら一気に時間が無くなった!
もしかしたら、もう待ち合わせの駅で待ってくれているかも知れない、急がないと!
俺は、駅に向かってほぼ全力で走り出していた。
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