冬の幻 、重なるシルエット

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 ── ────  「よっこいしょ」 白い息を吐きながらベンチに座り、通りを見つめる。  ……ここに来ると嫌でもあの惨状を思い出す。 だけど、僕にはここしか彼女らに会える場所が解らない。 無意識に手に持つカイロを握りしめる。  幻でもいい。 せめて、 一目会いたい。 あの悪夢に魘された日は特に思うんだ。 ── ────  「後、3周な!」 「うぃーっす!」 ── ザッザッザッ、と軽やかに陸上部らしき少年達の走り込み。  「ハナー、ちゃんと前見て走りなさい」 「だいじょうぶだよー」 「いったーい。」 「ほらみなさい、だからちゃんと前見て走りなさいって言ったでしょ!」 ── 最近よく見かける親子、娘さんが躓いて転んだようだ  「それでねー、ウチの旦那ったら……」 「えー、やぁだぁ……」 ── マダム達のふくよかな身体を揺らしながらウォーキング。  長時間ずっと座っていると色んな人達を目にする。 ……当たり前だが、やはり妻達の姿はない。  チラリと近くの時計を見れば、針が12時を指している。 もうすぐ昼だ。  昼食を食べに戻らないと後がうるさいから仕方なく、寒さにかじかんで若干マヒしかけている身体を動かす。
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