冬の幻 、重なるシルエット

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 横になっていた時間は5分程だったが、容器の蓋を開けると、昼食はすっかり冷めてしまっていた。  塩分の他に色々と食事制限がかかっていて味が少し薄い食事。 ── ──── 『今日は自信あるよ!』 『ごめん!今日の夕飯、なんだか失敗しちゃった』 『今日のカレーは特別美味しいよ!』 ── ────  ぬるくなった味噌汁をすすっていると、あまり料理が得意じゃないが、毎日頑張って作ってくれていた妻と、彼女の手料理を思い出した。  たまにお世辞にも「美味しい」と言えないくらい不味い時もあったけど、それでも毎日笑顔で温かい食事を用意してくれていた。  家に帰ると妻と娘の笑顔。  職場で倒れ目が覚めた時、病院に緊急搬送されてから何日間も目を覚まさなかった僕を涙を流しながら抱きしめ、笑顔を見せてくれた。  亜黄(あき)瑚白(こはく)、二人が居てくれたから、辛いリハビリも頑張れたんだ。  たとえ思い通りに身体を動かす事が出来なくて、まだ幼い瑚白と駆け回る事が出来なくても、幸せだった。
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