冬の幻 、重なるシルエット

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 "コンコン" 「失礼しまーす」  二人との思い出を思い出していると、さっき昼食を持って来てくれた看護師の御坂さんが入ってきた。  ヤバい、まだ全然食べてない! 「あれ?まだ全然手がついてないみたいですね」 案の定、トレイの上にほとんど手付かずで残っていた昼食を見た御坂さんに指摘された。  「すいません、ちょっとごそごそしていただけなんでちゃんと食べますよ」 僕は精一杯、シラをきる。 彼女は「へぇ~」と少し怪しんでいる。  「いやいや、ほんとに食欲はあるから大丈夫ですって」  昼からも外出したいから、今度は必死に嘘をつく。 「じゃあ、検温しながら見てるんでしっかり食べましょうね~」  御坂さんも意地悪そうな表情でちゃかしてくるが、 ……たっく、どいつもこいつも!この病院に勤めている人達はSっ気の強い人達ばかりだ。 文句を言いたいところだが、彼女達も仕事で、しかも間違ったことは言っていないので、大人しく箸を進める。
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