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重なる影に戸惑い、いつも脳裏に描き、記憶に残る娘の姿を想像する。
そしてポケットに突っ込んだスマホを取り出しデータフォルダを開く。
スマホに映る瑚白は、はにかんだ笑顔でたどたどしくピースをするサラサラストレートのボブ。
人見知りが激しく、白やピンク、淡い色の服をよく着ていた。
それに比べ、少し離れた場所で遊ぶ少女の笑顔は活発そう。
頭の横で2つに結び、ふわふわした髪が少女が駆ける度に風になびく。
確か少女は赤やオレンジ、原色カラーの服をよく着ているし、今だって濃いピンクの上着を着ている。
少女を見ていると、僕の視線に気付いたのか、少女が振り返り笑顔で手を振ってくれる。
その姿に、やはり同じように手を振る瑚白が映る。
『パパー』
他所のお宅の娘さんをジロジロ見るのは良くない。
頭ではちゃんと解っているのに……。
幻でも、また元気に走り回る瑚白に会えた。
目の奥がツーンとなり、温かいモノが頬を伝う。
冷たいモノも顔に触れた。
「あ!ゆきだー!!」
少女は両手を上げ、空を見上げている。
『ゆき!』
両手を胸の高さに出し、掌に触れては消える雪を眺める瑚白の姿。
「雪が降ってきたから帰ろ?」
少女は母親に連れられてしぶしぶ帰っていく。
2月。
空にはたくさんの雪が舞いだした──── 。
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