冬の幻 、重なるシルエット

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 雪が降ってきたから僕も帰ろうと立ち上がった。 あちこちの花壇を手入れをしていたボランティアの人達や公園の管理人さんが慌てて帰り支度を始めた。  「あの、手伝いましょうか?」 自分が座っていたベンチの真後ろにある花壇の土を興していた顔馴染みのおばさんに声をかける。  「え!黒束さんはいいよ、身体に障るから早くお帰り。」 僕の事情を知っているこのおばさんは、少し驚きながら帰ることを勧めてきた。  「気持ちだけ、ありがたく受けとっておくからね」 立ち尽くす僕に、おばさんが用具を片付けながらニコニコしながら言った。 「解りました。では、風邪引かないように」 「私は頑丈だから大丈夫だよ!黒束さんこそ、気を付けてね」 おばさんにお辞儀をして病院へ帰る。  目の前の通りの脇に、自分が供えた花をちらりと見ると、自分が供えた花とは違う花も添えられている。
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