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「最近、黒束さんなんだか嬉しそうですね~」
「そう見えます?」
あの雪の日から数日後、白根さんがいつものように検温しながら聞いてきた。
ほんの少し、溶けなかった雪で遊ぶ[ハナちゃん]という名の少女。
せっせこと雪玉をつくり、小さな雪だるまをたくさん作る[ハナちゃん]の姿、その横で雪ウサギを作る瑚白の幻を思い出し、口元が弛む。
白根さんがすかさずニヤリと笑い、メモをしながら僕を見る。
「ええ、とっても!詰所でもよく話題になるんですよ~」
「え!やだな~、やめてくださいよ~」
「あはは、変な話題にはなってないから大丈夫ですよ」
「解ってますけど、……変な話題なら尚更嫌ですよ」
「堂本先生も、顔色が良くなったって感心してましたよ」
「そうですか」
別に今更、病気の症状がどうなろうと気にならない。
ただ、死ぬまでの一日一日を病院と公園を往復しながら生きているだけだ。
「ええ、何か良いことあったのかな~って他の患者さん達も笑ってましたよ」
「詰所だけでなく患者さん達にまで」
言われてみれば、確かに最近よく馴染みの患者さん達に茶化されて、笑って誤魔化している。
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