冬の幻 、重なるシルエット

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 3月の終わりに桜が咲き始めた。 ちょうちょが飛びだし、道端に咲くタンポポが風に乗って踊りだす。  外はすっかり春模様。 [ハナちゃん]はシロツメ草を摘んだり、ちょうちょを追いかけたりしながら、たまに手を振ってくれる。 ── ────  4月に入り、真新しいピカピカの幼稚園の制服に身を包み、指定の鞄を持った[ハナちゃん]が、お母さんと手を繋いで公園の前を通り過ぎて行ったのが見えた。  そうか、[ハナちゃん]は幼稚園に入園したのか。 通り過ぎていく[ハナちゃん]に、心の中でおめでとうと囁く。 ── ────  「ママー!こうえん!こうえんいこうよー」 4月半ば、幼稚園から帰宅してきた[ハナちゃん]がいつものように、公園の前で立ち止まり公園を指指しているのを母親が早く来なさいと手招きしている 。  [ハナちゃん]の声は大きいから良く聞こえるが、母親の声は小さくて聞こえない。 「はあい!こうえん♪こうえん♪」  それでも機嫌良く帰って行く[ハナちゃん]を見ていると、彼女達が一旦帰宅してからまた公園に来るのが解る。
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