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"コンコンッ"
「黒束さーん、おはようございます」
ぼんやりと空を眺めて自問自答していると、軽快なノック音が聞こえ、一人の看護師が入ってきた。
「……おはようございます」
「よく眠れましたか?検温でーす」
コツコツと床を鳴らしながら笑顔で入ってきた彼女は、ベッドの側まで来ると僕の顔を覗きこむ前に少し顔を強ばらせた。
「顔色が良くないですね、あまり眠れていないんですか?」
視線をベッドの上で投げ出している足に向け、少し考える。
あの夢を見るまではきっと眠れていたはず。
「いえ、ちょっと……」
「……またあの日の夢ですか?」
「……えぇ」
言葉を詰まらせただけで、なんだかんだと付き合いの長い彼女にはお見通しのようだ。
「もうすぐ朝食を持って来ますが、……今日も行かれますか?」
「ありがとうございます、その予定です。」
はい、と体温計を渡され脇に挟む。
その間に彼女、白根さんは僕の人差し指に器具を挟み、脈と酸素量を測る。
「……少し前に起きたばかりですか?心拍がちょっと高いですね」
自分では脈は正常に戻ったとばかり思っていたので少し驚いた。
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