冬の幻 、重なるシルエット

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 扉が静かに完全に閉まり、僕は「ふぅ~、」と一息ついて再度外を見る。  部屋の中が暖房で暖かいせいで窓が若干曇っていて、更にガラスに吹き付ける風の音が強く、先ほど白根さんが言っていたように寒そうなのがよく解る。  「……カイロたくさん持って行こう」 まだ外出許可が下りていないが、あまりの風の音に思わず独り言が漏れ、自分自身で可笑しく感じ苦笑していると、 "コンコン"と再度扉を叩く軽快なノック音が聞こえ、  「黒束さーん、朝ごはん持ってきましたよー」 こちらの返事より先に扉が開き、白根さんが朝食の乗ったトレイを持って来てくれた。  「ありがとうございます」 コト、と小さな音を立てサイドテーブルに置かれた朝食を見て僅かに眉間にシワがよる。 「今日はいつもより少し多いみたいですけど、頑張って食べましょうねー」 白根さんが、まるで小さな子供に言い聞かせるように、だけどニヤニヤと意地悪そうな表情で僕に言う。 「……ええ、勿論しっかり食べますよ。」 「ふふふ、そんな膨れっ面しないで下さいよー」 膨れっ面をした覚えはないが、……そんなに僕の思考は顔に出ていただろうか? 不思議に思いながら、まずは何故かいつもより1個多いパンが入った袋を手に取り、朝食を食べ始めた。 もちもちしたパンで、1個でも十分な大きさなそれが、今日は3個。 ちょっとした嫌がらせだ。
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