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「堂本先生。黒束さん、外出の許可を出してよろしかったんですか?」
病棟の廊下の窓から外を、……出て行く黒束の姿を心配そうに見下ろしながら問う白根。
「ん?……念押ししたのは白根さん、キミだろ?」
廊下を歩いていると、呼び止められ振り向いた黒束の主治医である堂本がキョトンとしながら答える。
「そう……ですけど。」
「……大丈夫だよ。往診の時は異常なかったし、朝食もしっかり食べたようだから。……それに、…………今の彼には息抜きが必要だからね」
視線をさ迷わせながら、何とも歯切れの悪い言い方をしながら答える白根の頭を堂本は手に持っていた資料でポンポンと軽く叩き明るく、最後はポツリと呟く。
「……辛いでしょうね」
窓から姿の見えなくなってきた黒束を見つめながら辛そうに呟く白根。
「そりゃね……。だけど俺達には何もしてあげられないから、多少の外出は許可してあげないと」
資料を持っていない右手をポケットに突っ込み、彼女と同じように黒束の行く先を見つめる堂本。
──
────
黒束が入院している『櫻の元病院』には通りを挟んですぐそばにわりと大きな緑地公園がある。
公園の道路に面した入り口を少し進んだ先にある少し広めの花壇の前にあるベンチ通うのが彼の日課だ。
自力で歩けるまで回復した彼が、リハビリがてら散歩していた場所。
──── いつも彼の見舞いとリハビリに付き合う妻と娘が来るのを座って待っていた場所。
病室では退屈してしまう娘が笑顔で駆け回っていた場所。
彼が、妻と娘の撥ね飛ばされる光景を目の当たりにした場所でもある──── 。
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