プロローグ「密室の花嫁殺人事件」の終わり

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■「密室の花嫁殺人事件」の終わり■  シャンデリアが放つ明かりは、赤い絨毯についた黒いシミを際立たせている。  ひと月前、ここで一人の花嫁が殺された。  華やかな結婚式場での殺人事件は連日のように報道され、ネットには様々な憶測が飛び交っていた。  出入りすることができない、密室の式場での殺人事件。華やかなシャンデリアにつるされた花嫁の純白のドレスは鮮血の花で彩られてしまった。  密室の花嫁殺人事件。  この事件はそう呼ばれている。 「さて」  男は皆を集めて声を発した。  長い髪を無造作に結んだ男――探偵が、シャンデリアの下に立っている。  長身の男が作る影は、乱反射するシャンデリアの明かりのせいで円を描くように周囲に拡散している。  彼を見よ、光がそのように指し示しているようだ。  誰もが息を飲む。  探偵の笑みは、ほのかに甘みを感じさせる。その唇がゆるやかに次の言葉を告げた。 「犯人をお教えしましょう」  広い結婚式場の中央には、探偵を除き、十二名。入り口には警察官が立っている。  ここにいるのは、容疑者だ。  探偵が誰を犯人と指すのか。  靴音一つ許されぬ静寂の中、探偵は一度膝を折り、絨毯のシミを囲む白いテープを指先でなぞった。  純白のドレスに身を包んでいた被害者は、実に四十二回、刃物で切り付けられていたという。  靴が沈み込むほどの絨毯に不釣り合いな黒い染みは、その時についたものだ。 「美しき花嫁、彼女の幸福の日を奪った犯人……」
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