胎動

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「1日のうちに、街がこんな事になるなんて…。」 何者かに襲撃された街。 報せを受けた薔薇は、ディセント、クレス、ティークを初めとする団員達と街に訪れ、調査に当たっていた。 襲撃された当時は市場が開かれていたらしく、無惨に壊された屋台が点在し、また商品もあちらこちらに転がっていた。 「異変を察知した幻世界の団員が駆け付けた時にはいなかったようです。目撃者に話を伺うしかありませんね。クレスとティークは何名か連れて、住民達に話を聞いて情報収集を。他の団員は、私とディセントと被害状況の把握に入りましょう。」 薔薇の指示で各々が行動すると、薔薇とディセントは二手に分かれて動き始める。 「父さん、俺は路地裏を中心に見てくる。何かあったら連絡する。」 「お願いします。気を付けて。」 ディセントが数名の団員と一緒に離れた直後、薔薇の通信機に着信が入る。 「デュレイザから…? はい、どうしました?」 『先日襲撃を受けた街だが、駄目だ。犯人の痕跡が見当たらない。小さな街とあってか、目撃者も少なくて手掛かりがない。』 「こちらも今、調査を開始したところです。そちらよりは多少は人はいるので、何らかの情報は入ると思います。一段落したら合流して下さい。」 『分かった。』 デュレイザとの通信を切ると、薔薇は端末を操作して、送られてきた報告書に目を通す。 日付は、ここ一週間のもので、全て幻世界で起きているものだった。 被害状況は記載されているものの、街を襲撃した犯人の情報は極端に少なく、調査も難航していた。 ― 何らかの目撃情報はあっていい筈…。これだけの被害がありながら、ゼロに近いなんて…。 「総隊長ー! ちょっと来て下さーい!」 住民への聞き込みをしていたクレスに呼ばれると、薔薇は端末を閉じた。 クレスに呼ばれて来たのは、街の一角にある酒場だった。 外のデッキや屋根が多少壊されていたものの、店内の被害は少なかった。 カウンターには酒場の店主と、店員と思われる女性がいた。 「何か分かったんですか?」 「襲撃当時、床下にいたから難は逃れたみたいっス。それで彼女達が襲撃してきた奴の姿を見たって。」 女性に目を向けると、女性は慌てて会釈をし、肩を竦める。 「当時の事、話して頂けますか?」 「はい、昨日の事なんですが…。」
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