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「青い半透明の生物…。聞いた事ありませんね。」
店主と女性の話を聞いた薔薇は、聞いた事のない生物の存在に眉を潜める。
「生物という事は、動いてたって事っスよね?」
「はい。動きはゆっくりだったんですが、確かに動いていました。」
僅かな視界でしか見えなかった為、女性の証言はまだ参考とまでしか考えられなかった。
目撃者が漸く見つかったと思いきや、情報はほんの一握りに等しい。
「貴方達は青い生物を見たというワケですが、周辺の人達も見ていたという事は?」
「それが、騒ぎが落ち着いた後にお隣さんに聞いたんですが、何も見ていないって返ってきて…。あれだけ揺れていたのに、その事自体も知らないって言って…。これだけ街が壊されてるのに知らないって、明らかにおかしいですよ。」
「誰もが気付く筈なのに気付いていない…? これは一体…。」
目撃者と周辺住民との辻褄の合わない証言に、困惑するしかなかった。
「路地裏はあまり被害はないみたいだな…。」
他の団員と共に路地裏を調査するディセントは、現状を把握しながら歩き回っていた。
所々では木箱が散乱したり、崩れている箇所があるが、大通りよりは被害は少なかった。
― 一度父さんに連絡をして、合流した方が…。
薔薇に繋げようとした時、ふと違和感を感じる。
視界に写ったわけでも、音が聞こえたわけでもない。
だが、自分の中の本能が、今にも消えそうな何かの気配を察知している。
僅かな気配を頼りに、ディセントは路地裏を歩く。
針の先でつついたように小さな気配は、やがてある所に着く。
山積みになった木材の隙間からは、ボロボロの布切れが覗いていた。
「此処から気配が…。まさか…!」
ディセントは他の団員を呼び、木材を退かす。
やがて布切れがだいぶ見え、捲ってみると、白い手が見えた。
手首に触れると、脈を打っている。
「生きてる…! 急げ!」
木材の大半が退かされると、ディセントは布切れを剥ぎ、脇を抱えて引きずり出す。
「しっかりし…ろ…?」
何かに気付いたのか、背中を見るなり目を丸くする。
他の団員もディセント同様に唖然とした。
「え…? これって…!?」
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