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ディセントの連絡を受けた薔薇達は、GPSを頼りに路地裏へ向かい、ディセントと合流する。
団員達が周りを囲むようにして、中央にいる負傷者を手当てしていた。
「ディセント。負傷者は?」
「命に別状はないんだけど、ただ…。」
ディセントは何やら困惑しており、薔薇を連れて負傷者の元に向かう。
団員達が退くと、負傷者の姿が見えたが、その姿に思わず目を丸くした。
「これは…。」
横たわっていたのは、ディセントよりも幼い子供だった。
気を失っていて、目覚める気配はなかった。
だが一番に驚いたのは、背中に生えているものだった。
右側は【吸血鬼天使】の特徴である黒い天使の翼。
そして左側は、【吸血鬼悪魔】の特徴である漆黒の黒い翼。
両種族の翼を有していたのだ。
「人間と吸血鬼のハーフは知ってるけど、この子みたいなのは見た事がなくて…。」
「私もです。昔、少しばかり話は聞いた事がありますが、初めて見ました。」
「この子、どうしてこんな所に…?」
「一度【薔薇十字団】で保護しましょう。街を回りましたが、吸血鬼の姿はありませんでした。恐らくはぐれてしまったんでしょう。」
担架に乗せようとした時、子供は少し呻き、目を開く。
ルビーのように赤い瞳が、伸びきった琥珀色の長い髪から覗いた。
「…?」
「気がついたか? 今から【薔薇十字団】に搬送して…。」
「ぁ…、ぅ…。」
絞り出すような声で、何かを訴えようとしている。
しかしその声はか細く、上手く聞き取れない。
「え? 何…?」
「い…、やだ…。こわい…。たすけて…。」
襲撃に巻き込まれて怖い思いをしたのか、手は小刻みに震えていた。
「…大丈夫。とりあえず、【薔薇十字団】に行こう。」
ディセント達は子供を担架に乗せ、帰路に着く。
薔薇や一部の団員は現地に残り、調査を再開した。
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