胎動

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【薔薇十字団】本部では、由月がアイファと共に運び込まれた子供の処置に入っていた。 双方の翼を持つ子供は、本部に到着するや否や気を失ってしまっていた。 「こんな子、初めて見ました。」 「処置どうしようかなぁ…。私の【聖なる血】で治癒したら浄化されちゃわないかな。」 「そこまで酷い傷はなさそうなので、包帯とガーゼで間に合いそうですね。」 アイファが手際よく準備を始めている傍ら、由月は子供の手に触れ、【聖なる血】を発動し、意識を探る。 ― 【吸血鬼悪魔】の血が混ざってるなら、手短にした方がいいかな…。 目を閉じ、真っ暗な世界に灯る一点の光に手を伸ばそうとした時だった。 「わっ!」 繋いでいた手にバチリと電流が走り、由月は慌てて手を離す。 由月の手には火傷のような痕が傷が出来、少し煙が 立っていた。 「意識を探れない…?」 「聖女様? どうかして…って、その傷は!?」 声を聞き付けたアイファが戻って来ると、いつの間にか由月の手に傷が出来ていて、思わず驚いてしまう。 「【聖なる血】で意識を探ろうとしたら、なんか拒絶されちゃって…。」 「大丈夫ですか!? 今、手当てを…!」 「大丈夫だよ。軽い火傷みたいなものだから。ちょっと流し台借りるね。アイファさんはその子の治療を優先してあげて?」 由月は流し台に向かい、火傷を負った手を冷やす。 ― あれは只の拒絶じゃない。あの子の意志によるものじゃなくて、あの子以外の何かによる拒絶。一体、何者なの…?
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