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ヴァチカンに本部を構える【薔薇十字団(ローゼンクロイツ)】。
戦いで壊滅的な被害に見舞われた街は次第に建物が建ち、本来の姿を取り戻しつつあった。
住民達は【薔薇十字団】の敷地内の仮設住宅に身を置き、復興に街へと通っていたが、住居が出来たという人が多くなり、元の生活に戻る為に出ていくという人が増えていた。
「お世話になりました。またウチの店に遊びに来て下さいね。」
今日も退去する一家がおり、ディセントは非番にも関わらず、荷物運びの手伝いをしていた。
すると少女がディセントの元に駆け寄り、折り紙で作った花をディセントに差し出した。
「お兄ちゃん、今までありがとう。また遊びに来ていい?」
「うん。いつでもおいで。」
ディセントは少女の頭を優しく撫で、折り紙の花を受け取る。
一家が街に向かうのを見送り、踵を返して敷地内に戻る。
その時だった。
「せんぱぁあああああああい!!!」
突然誰かが突進してきて、勢いのあまりディセントは倒れてしまった。
「っ…! あ…、ヴァルト…!?」
「先輩っ!! 俺、今日からアメリカ支部に研修っす!! 暫しの別れです!!」
「あー…、もうそんな時期か…。まぁ、頑張れ。」
「それだけ!? アメリカ支部って、メチャ厳しいって聞くんすけど!?」
「厳しいからこそ学ぶ事が沢山あるんだろ? お前なら大丈夫だから、手取り足取りしっかり学んでこい。」
ディセントの励ましに感激したヴァルトは思わず涙ぐみ、ビシッと姿勢を正して敬礼する。
「ヴァルト、頑張ってきます!! 先輩の背中を守れるよう、精一杯勉強してきまっす!!」
そう言うと、ヴァルトは踵を返し、ゲートがある地下へ向かって走り出した。
「…一体何しに来たんだ、アイツ…?」
ディセントは立ち上がって砂を払い、敷地内にある自宅へ向かった。
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