胎動

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「お疲れ様です、総隊長。」 執務室に何やら疲れた様子のアルケリオが、茶封筒を何枚か持って入ってきた。 デスクでは薔薇が提出された書類に目を通し、サインを(したた)めて処理をしていた。 「お疲れ様です。研修組の見送り、どうでした?」 「それが…。場所が場所からなのか、皆緊張の面持ちで…。ヴァルトに関しては涙ぐんでいましたよ。」 「まぁ、彼の性格なら乗り切れますよ。意外とあっけらかんとしているかもしれません。」 「そうですね。あ、これ。今日退居した住人からの届です。」 薔薇はアルケリオから茶封筒を受け取り、封を開けて書類を確認する。 「元の生活に戻る人が増えていますね。」 「はい。ですが、まだ今の生活を送らざるをえない住人もいます。引き続き、支援を継続していかなくてはいけません…が…。総隊長。」 アルケリオは顔を顰め、咳払いをする。 薔薇の周りには山積みになった書類が囲むように置かれており、それとは裏腹に処理を終えた書類は少なかった。 「…業務開始時間、何時からでした?」 「9時です。」 「今、何時ですか?」 「…10時半頃ですね。」 「で、処理が完了したものは?」 「これだけです。」 「なるほど…。手、止めてましたね?」 「相変わらず鋭いですね。」 平然と笑みを浮かべる薔薇に対し、アルケリオは鬼の形相と言わんばかりの恐ろしい表情を浮かべていた。 戦闘がない時は、薔薇は執務室で各部隊からの報告書や申請書の処理、受理を担当している。 その日のうちに提出されたものは、その日のうちに片付けてしまうのだが、時々手を止めて余所事をしてしまい、その間に書類がどんどん積み重なってしまう。 処理能力としては申し分ないのだが、アルケリオから見れば、山のように積み重なった書類を見ると、仕事をサボってるんじゃないかと捉えられてしまっていた。 「仕事中とはいえ、ちょっとした息抜きも必要ですよ?」 「ちょっとした息抜きで溜まるレベルじゃないですよ、総隊長…! お金は貯めても書類は溜めないで下さい!!」 「上手い事言いますね。」 「ありがとうございます…じゃなくて!! 午前中に半分を目標に片付けますよ!? 俺も手伝いますから!!」
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