第一章 消えない記憶

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車に乗って10分もすれば職場である巨大な倉庫が見えてきた。 倉庫を通りすぎ奥へと車を止める。 「よっこらせ」 そう言いながら勢いをつけて降りていけば倉庫と外界を遮るような鉄の扉を開けて店内へと入った。 ギギギと鉄の錆びた音がする。 中に入ればひんやりとした空気が秀一を出迎えた。 外の空気もそんなに暑いわけはないために少しばかり肌寒さを感じるかもしれない。 秀一は陳列されているヴィンテージの家具たちをすり抜け奥の部屋を目指していれば声をかけられた。 「いらっしゃいませー・・・って、あれ?マキさんじゃないっすか。今日はもう戻ってこないと思ってましたよ」 客だと思って出てきた従業員のヤスであった。 キャップを目深にかぶりパーカーに大きめのジーンズという出で立ちである。 因みにこの店では一番若く23歳である。 「甥っ子を迎えに行って家に送ったら戻ってくるって言ってただろ」 出ていく前に確かに自分はそう伝言を頼んだ筈だった。 それも目の前のこの男に。 「えー?俺、絶対そのまま飯食いにいったりするのかと思ってました」 「はは」と笑うヤスに「はあー」とため息をつく。 そして奥の部屋に辿りつけば同じ歳の同僚からも「戻ってきたのか?」と不思議そうに言われ秀一は隣にいたヤスの頭を叩いた。 「いてっ」 「お前なあ、伝言くらいちゃんとしろ」 「まあまあヤスも態とじゃないし・・・な?」 「うっす!じゃないっす!」 結局同僚であるクロがヤスを庇う形となるのもお決まりである。 「でも本当に今日なら結構ゆっくりだし早く帰っても良いんじゃないか?」 ふとクロがそういった。 確かに店内が忙しい感じでもないし、特別に仕事の量が立て込んでいるわけではない。 しかし秀一はクロの提案を断ると小さく笑った。 「別にいいさ。あいつも俺が帰るまでゆっくりできた方がいいだろう」 「そうか。だったら別にいい」 クロがフッと笑う気配がした。
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