第一章 消えない記憶

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『○○駅・・・○○駅』 漸く目的の駅の名がアナウンスされると巽はスポーツバックを背負い固い椅子から腰を上げる。 態々快速電車が停まる場所を鈍行で乗ってきている人は少なかったようでパラパラと人が降りて階段を上がっていく。 久しく来ていなかった土地のため、周りの動きに合わせ足を動かした。 電車の中では感じなかった空気の流れを感じれば巽の足は自然と早くなった。 背後にあるスポーツバックがその歩調に合わせるように大きく跳ねる。 改札口が近づき『やっと外だ』と心の中で喜んだのと同時にポケットが震えた。 ブブブブブ 「・・・・・・」 改札口を前に巽は取り敢えず手持ちのICカードを取り出せば素早くタッチさせた。 ゲートが開いたのを確認し通過しながらポケットに手を入れた。 既にポケットに入れていたスマートフォンが震えは止まっており、浮動の長さからメールなのだろうと思い至る。 巽は足を止めることもなく歩きながら取り出した。 ほんの数日前に買ったばかりの機種であるが使っていたモデルは前のものと一緒なので不都合はない。 前に持っていた分は破損してしまいどうにも修理などできそうにないほどであった為に親が買い直してくれたのだ。 新しいが使いなれた形に手際よく操作をして、メールを開く。 開けば差出人の欄にある名前が予想通り立った為視線をそのまま下ろせば一言。 『駅前についてる』 そう書かれていた。 予め乗り遅れた事は伝えていたものの、仕事中であるのだ。 態々時間を作ってきてくれた彼を待たせてはいけないと今度は階段を降りながらキョロキョロと車を探していれば、突如大きなクラクションが鳴り響いた。 その音にドキリと心臓がなれば、音のする方向へと視線を向けた。 すると目に入ったのは視界の隅からこちらに向かってくる巨大な白い車。 見慣れないワゴン車につい目を丸くしてじっと見つめてしまった。
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