のぞみと希のShip's Log《航海日誌》

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 困惑してドロドロで、もぅ思わず二本足で立ってわたわたと焦ってるぼくにのぞみは、その強い意思の宿った紅い瞳で微笑んで、もう一度言った。 「行くよ?マレシ。 あなたも渡れるんでしょ? ついて来なさい。積もった話はあとにしましょう。」 「えっ?!はっ はいっ!」  なんだかDNAレベルで彼女の声には逆らえず、思わず返事をしてしまった。  そして彼女は海に向かうと、思いきり息を吸い込んで叫んだ。 「海に住まう海の子供たちよ! 私は日本唯一の海賊にして、世界最大最強の村上水軍の最後の長、希子(きこ)! 村上希子の名において命じます! 私と私の従者、(マレシ)を彼の地へと運びなさい!」  希子?! ご主人様?!  ほんとに?!  驚いて見上げる彼女の瞳は、確かに希子の瞳の色。少し異国の血が混じった紅く美しい色。  有無を言わさないような、強い意思のかたまり。それがぼくのご主人様、村上水軍最後の頭領。村上希子だ。  間違いない。目の前に居るのは、正真正銘の希子だ。  ぼくが、450年もの間待ち続けた、最愛のひと。  涙で目が霞む。  今すぐその豊かな胸に飛び込みたい。  思いきり助走をつけて、彼女に飛び込む。  ─じゃっぱーん!  希子に避けられたぼくは、派手な音を立てて海に落ちた。     
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