2人が本棚に入れています
本棚に追加
小さな爆発音も聞こえる。石油に引火するのも時間の問題だろう。
まだ海保も、他の漁船たちも来ていない。
「助けて!誰か。お父さんがっ!お母さんがっ!」
二階客室から女の子が泣きながら海に向かって叫んでる。
希子がすぐに反応して、イルカの背を飛ぶように走り、客船に飛び乗る。
「どうしたの?お父さんお母さんが落ちたんだね?」
泣きながら何度もうなずく女の子の前にぼくをおろして、希子は海に向かって叫んだ。
「さぁ海の子供たち!この付近に流されている人間を残らず助けなさい!生きていても死んでいてもよ?急げ!!」
希子の声にイルカたちが一斉に散らばった。
それを見届けてから、希子は女の子に向かって微笑んで言った。
「もう大丈夫だからね。そのネコさんと、安全な場所で待っていて?お姉ちゃんとネコさんがみんな助けるよ。わかった?」
「…うん。ありがとうお姉ちゃん。お願いします。」
女の子が深々とお辞儀して言ったのを見て、希子がくしゃくしゃっと女の子の頭を撫でた。
「いいのお礼は。マレシ?女の子を下のカーゲートまで下ろしたら、船内に残ったみんなをそこに誘導しなさい。急ぐよ!」
弾かれたように走り出す希子。
ぼくも急いで女の子に声をかけて誘導する。
「こっちだよ!ついておいで!」
最初のコメントを投稿しよう!