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女の子は驚きはしたものの、黙ってついてきてくれた。
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「希子!間違いない。乗員乗客これでぜんぶだ!」
「ありがとう!こっちも集めたわ!」
石油運搬船のほうで乗員を甲板へ誘導していた希子が、甲板から叫んで、こちらに飛んできた。
「でも、生きてる救命ボートは四隻だよ?みんな乗れない。どうするの?」
ボートの定員は20名。ギリギリ乗っても30名が限度だろう。
あとの30人ほどが乗れない。でも急がないと引火してしまう。
希子を見上げると、笑っていた。
すごく綺麗な、ぼくの大好きだった太陽のような笑顔。
ぼくは大きく嘆息をして言った。
「君が笑ってるなら、ぼくたちは絶対に勝てるんだ。そうだったよね?」
「ふふふ。私たちは負けないよ?だって、世界最強の海賊なんだから。」
そう言って希子は、また海に向かって叫んだ。
「海の子供たちよ! 私たちを陸地へと運んで!お願い!」
その声に呼応して、海面がみるみる盛り上がり、茶色の陸地が出来上がる。
よく見るとアカエイの群れだ。
アカエイたちが身を寄せあって、海面に巨大な陸地を作っている。
乗員乗客たちが驚いている。ムリもない。こんなのムチャクチャだ。
だけど、希子らしい。
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