第1章 お化け屋敷

4/7
100人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
学校の前の道路を住宅街へ向かって真っ直ぐ進み、コンビニを通り過ぎて橋を渡る。優衣の家はそのまま直進だったが、三浦裕也の家へ行くには右に曲がって、急な坂道を上らなければならない。 裕也は小学四年生の二学期に転校してきたそうだ。ちょっとかっこいいけど生意気な子が来たと、一部の女の子たちの間では噂だったらしい。だけどクラスの違った優衣はそれを知らなかった。 でも五年生になって同じクラスになると、一番家の近い優衣が、裕也の家に学校からの手紙を届けることが多くなった。 ――もう、なんで学校来ないのよ。 そう、裕也は学校を休んでばかりなのだ。だから優衣はいつも、先生から届け物を頼まれてしまう。 坂道を駆け上がると、裕也の家が見えてきた。 緑のつたが複雑に絡まりあう、古い洋風の建物。花でも植えれば綺麗なはずの広い庭は、雑草がぼうぼうと生えていて、うっそうとした木々がそれを覆っている。 だから小学生の間でこの家は、『お化け屋敷』と呼ばれていた。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!