霖之助の独白 ――①

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 十七歳の時、大手出版社の文芸雑誌が主催している新人賞を取った。当時、純文学と大衆文学の違いも分かっていなかったが、父親から譲り受けたパソコンで父親の悪口を書き、その言葉が意志を持って父親を殺す――言葉の効果で人を内側から毒殺するといった内容のメタ小説を発表し、その作品が史上最年少の受賞となった。  自分で言うのもおかしいが、当時の自分は売れる属性を過不足なく備えていた。年齢、顔の造形に加え、偏差値の高い男子校の現役高校生という実力外のアドバンテージ――今では全て失くしたものだが、その偏向(、、)フィルターのおかげでデビュー作は飛ぶように売れた。制服を着た写真が表紙の見返しに印刷されたハードカバーは本屋の入り口に平積みされ、版を重ね、帯も数回変わった。誤植もすぐに訂正され、写真も追加された。
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