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「ん? 嬢ちゃん、どうした?! ケガしたのか?」
動かないアタシを心配してか、副店長が声をかけてくれた。
──助かった。
いま少し、自分だけでは自身の体を動かせそうにないので、副店長に手助けしてもうらおう。
「……いえ、たぶん怪我はないです。ただ……──」
「──ただ?」
「──……つい先刻まで女装好きの男の子だと思っていた相手が、実は正真正銘の女の子だと理解した際に生じた衝撃で頭の中が混乱して、うまく身体が動かせないんです」
「…………。あー、もしかして、嬢ちゃんは少年の性別をついさっきまで、勘違いしたままだったって、ことか?」
「……………………はい」
一瞬「誤魔化そうか」という考えが頭を過ったけど、隠し立てしても恥の上塗りになるだけなので、素直に認める。
「…………………………………………ドンマイだ、嬢ちゃん」
──ぬをわぁっ!
副店長がアタシのことを可哀相な子を見るような目で見ている。──ような気がする。
なんか、自虐的な妄想からくる言い知れぬミジめ感が胸中にわだかまり、顔を上げられないまま、アタシは副店長の手を借りて立ち上がり近くのベンチへと連れていってもらう。
「嬢ちゃん、大丈夫か?」
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