角を曲がれば

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  パールには「王子に興味ない」宣言をしたが、知り合ってしまえば話は別だ。 私はイケメンが好きだ。大好きだ。 このまま王子とのイチャラブ展開が始まったとしても、誰も責めることはできまい。 目指すべき未来は決まった。今はこのピンチを乗り切ることだけを考えよう。 リア充ライフのため、この命を確実に守らねば。 「このカーテン邪魔ね。中が見えない」 「絶対見つけるんだから!」 「私を差し置いてお見合いだなんて、ひどいですわ!」 「私って何よ。王子はみんなのものでしょう」 「とにかく、ちゃんと説明してもらわないと」 今日の「タマ高タイムズ」で、彼女たちも王子のお見合いの件を知ったらしい。 追及されるのが嫌で王子は逃げていたのか。 王子の取り巻きすら知らない情報を、新聞部はどうやって調達してくるのだろう。 学校内の人間と言えど、写真まで載せてしまって大丈夫なのだろうか。 そんな「タマ高タイムズ」の謎を考えていると、思わぬ救世主が現れた。 リーーーーン ゴーーーーン 本鈴だ。 「あれ? これ予鈴?」 「いや、違うよ! 本鈴!」 「大変! 三浦先生に怒られますわ!」 「でも王子は?」 「もう戻ってるのかも!」 「とりあえず行きましょう!」 数名分のバタバタした足音と会話が、次第に遠ざかっていく。 それから数分したのち、遅刻したのであろう生徒が2人、視聴覚室の前を通り過ぎるのを最後に、廊下は静かになった。  
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