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「……」
「……」
「……行った?」
「むぐ」
私の返事に、王子は素早く手を離し身を引いた。
王子の理性は保たれたままのようだ。くっ、イチャラブ展開は望み薄か。
王子が電気をつける。急な光に、2人して顔をしかめる。
「突然ごめんね、本鈴も鳴っちゃったし」
「別に大丈夫ですけど……私はなんで連れて来られたんですか?」
「いや、だって、女の子って喋っちゃいそうだから、逃げた場所」
「ああ……」
王子の言葉に簡単に納得した。
確かに、一人あの場に残された状態で彼女たちと遭遇したら「あっちですよ」と簡単に教えただろう。
王子はドアに引いたカーテンの端を軽く持ち上げて、外の様子を確認していた。
ため息を漏らしてカーテンから手を離す。
午後の授業への出席は諦めているらしい。
背をドアに付け腕を組んで立つと、王子はそれ以上動かなかった。
憂いた顔が儚げだ。
教室の蛍光灯にはもう慣れたが、王子から発せられる新たな光に、私は再び顔をしかめる。
ダメだ、眩しすぎて見ていられない。
視線を手元に落とすと、また王子の顔があった。「タマ高タイムズ」だ。
「王子も大変ですね。マスコミに追われ、ファンに追われ……」
さっきは「王子とお近づきになれれば!」と思ったが、冷静に考えてみれば、お近づきになればとても面倒なことになるのは容易に想像できる。
王子の彼女になったら今回みたいに逃げ回ることもあるだろうし、プライベートも確保できないかもしれない。
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