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王子が私に交際を申し込んだ。
願ったり叶ったり、だ。
もちろん新聞部や王子の親衛隊は怖いが、このイケメン紳士が守ってくれるに違いない。
「ええ、もちろん!」
私が返事をすると王子は嬉しそうに笑い、私をそっと抱きしめてくれる。
「ありがとう。僕は君みたいな子をずっと探していたんだ……君は僕のシンデレラだ」
王子の囁きに、顔を上げる。
目をじっと合わせ、徐々に王子のドロ甘フェイスが近づいて……
そんな妄想を2秒ほどで脳内展開させると、思わず口の端がヒクリと動いてしまった。
やば、邪念が漏れる。気付かれる前に返事をしなければ。
そう思って口を開いたが、王子が言葉を続けてきた。
「と言っても」
王子が腕を動かす。
掴まれていた私の手が連動して持ち上がる。
「1週間程度でいいよ」
王子の視線が、掴んだ私の手に移った。
いや、手ではない。私が握っている「タマ高タイムズ」だ。
「この見合いを中止に出来るように協力してほしいんだ」
…………ん?
「ええっとぉ、それはつまり……」
「言うなれば『契約恋愛』ってところだね」
王子が私に視線を戻した。
「ベタなやり口だけど、それくらいがちょうどいい。恋愛ごっこを見せつけて見合いを諦めてもらう」
「な、なんで……」
「高校生が見合いなんておかしいでしょ。それに、愛のない結婚なんて、ねぇ?」
視界いっぱいに王子スマイルが映る。
高校生らしいあどけなさを含んだその笑顔に、冗談めいた臭いはしなかった。
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