角を曲がれば

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真家珠希とは高校1年生からの付き合いだ。 彼女は中等部から宝珠花にいるらしいが、私は高校受験組。 「中等部での仲良しグループばかりで友だちが出来なかったらどうしよう!」という悩みは、彼女の存在のおかげで簡単に払拭できた。 「あたし、真家珠希。よろしくね」 真家珠希は紙に名前を書いてそれを私に見せた。 人の名前を一発で覚えられない私にとって、それは大変ありがたい行為だ。 彼女の漢字をマジマジと見つめて、私は気付いた。 「あ、真珠」 「え?」 「ほら、字の中に「真珠」がある」 「あ、本当だ! 気にしたことなかった」 「よし、じゃぁパールって呼ぼう」 「え? パール?」 「そう。ダメ?」 「ううん! めっちゃいい! なんか可愛い! じゃぁ、馬場さんは……うーん……ローズは?」 「え? どこから取って来たの?」 「「ばばあきら」の最初と最後で「バラ」でしょ?」 「ははん、なんかラブリーすぎない? キャラ違くない?」 「うん、可愛い可愛い! まぁ、キャラは……」 「……ちょ、おま」 そんなやり取りを経て、私たちはお互いを「パール」「ローズ」と呼んでいた。 ちなみにこの呼び方は周囲にも浸透し、今や私たちの友人にはみんな、カタカナのニックネームがついている。 2年生に学年が上がった今も、私たちのクラスは「普通科」のままで変わらなかった。 そして友情もこうして変わらないわけだ。 「王子……相変わらず凛々しいお顔立ちだね」 サンドイッチを食べ終えたパールは、紅茶の紙パックを開けながら、またもや膝の上の「大和田総司」に視線を注いだ。 「この人、中等部からこんな顔なの?」 「そうなの! もうずっと話題の人なんだから! 新聞は高等部でしか発行してないけど、新聞がなくてもみんな王子を知ってたからね」 「ふーーーん」 私もパールと一緒に「大和田総司」の顔写真を眺める。
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