角を曲がれば

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「大和田総司」は「これぞイケメン!」と言いたくなるような、素晴らしいルックスの持ち主だった。 大きすぎない目、やや太めの立派な眉、流れるような鼻筋と、今にも小鳥たちと会話を始めそうな薄い唇。 少しクセのある髪も綺麗に整えていて、清潔感溢れるイイ男だ。 ついでに言うと、首筋にあるホクロがセクシーすぎる。 きっと良い匂いがするに違いない。フェロモンがプンプンするに違いない。 あまりのナイスガイさに、目が合っただけで気絶した女性が今までに4人いるという噂だ。 ただの噂だが、写真を見る限りではあり得ない話ではなかった。 私の感性からしても、彼はカッコいい。 頭も良い、顔も良い、おまけに金持ちときたら、女子たちは彼をこう呼ぶしかない。 「王子」と。 「本当に結婚するのかなぁ。まだ高校2年生なのに……」 「男の子は18歳まで結婚出来ないし、しても婚約でしょ。政略婚約。  やば、コンニャクが食べたい。おでんの汁が染みたコンニャク」 「もーーー、ローズってこの手の話題に乗ってこないよねぇ」 「だって、王子が友達だったらともかく、赤の他人だもん」 私もイケメンは大好物だが、言ってしまえば王子は芸能人みたいなものだ。 ニュースでイケメン俳優が結婚したと報じられても、「あ、そうなんだー」くらいにしか思わない。 「でもでも! 同じ学校なんだし、どこかでバッタリ会うかもしれないじゃん!」 「バッタリ会ったとしても、取り巻きの女子の壁に阻まれて、きっと何も見えないよ。ザ・肉の壁」 「ローズの意地悪~」 「パールこそ夢見すぎ」 そんなミーハー娘との会話は、午後の授業の予鈴によって打ち切られた。 午後一番の科目は物理だ。教科書を持って理科室に行かなくてはいけない。 「あう! トイレ行きたい!」 「はいはい、ゴミ捨てて来てあげるから、行っトイレ」 「……ローズ、そういうの恥ずかしくないの?」 「全然。先に教室帰るからね」 「うん、ありがとう」 パールは新聞を畳むと「これは捨てないで!」と言って、一番近いB棟に駆けて行った。 新聞は王子の顔が見えるように畳まれている。 「そんなに好きかね……」 左手にゴミを、右手に新聞とイチゴオレを持って、ベンチから腰を上げる。
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