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「普通科」の活動拠点は主にA棟とB棟で、「優特進科」は少し離れたE棟だ。
いつも通りに過ごしていたのでは、王子には絶対に会わない。
「会いたければE棟まで行けばいいのに」
独り言と一緒に、左手に持ったものをゴミ箱に落とす。
イチゴオレはまだ半分以上残っているので、このまま教室まで持っていく。
歩きながら、新聞を左手に持ち替えて、改めて王子の顔を眺めた。
新聞の角度を色々変えてみる。
どこから見ても王子はイケメンのようだ。
中庭からA棟へ行くには、正規ルートよりも、物の隙間を通った方が早い。
私は迷わずその隙間に入り込む。
「どこかでバッタリなんてあるわけないじゃない」
そう、どこかでバッタリなんて、あるわけないのだ。
あるわけない。
隙間を通り抜けて、ようやく視界が開ける場所に出た瞬間、
「え」
「あ」
新聞に気をとられていた私は、突然現れた影に対応出来ず、そのまま影に体当たりを食らわせてしまう。
イチゴオレも「大和田総司の顔」も地面に落ちる。
ついでに私の尻も。やば、パンツ見えるかも!
そう思った直後、ドン・ドコ・バサ、と尻・オレ・新聞の順に、不時着した音が耳に届いた。
「あ……」
「いったぁ。ごめんなさい、前よく見てなくて……」
思わず閉じてしまっていた目をゆっくりと開ける。
そして、自分がぶつかった人物が誰なのかを知り、絶句する。
大きすぎない目、やや太めの立派な眉、流れるような鼻筋と、今にも小鳥たちと会話を始めそうな薄い唇。
少しクセのある髪も綺麗に整えていて、清潔感溢れるイイ男。
首筋にあるホクロがセクシーすぎて。
良い匂いがした。フェロモンがプンプンした。
彼の足元に、新聞が落ちていた。
そこに載っていた「大和田総司」の写真と、目の前の人物は、全く同じ顔をしていた。
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