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影のように寄り添うような近さで黒髪の少年の隣を歩く茶髪の男が、クスクスと笑いながら言った。
男が歩くたびに弓の束と弓矢が背中で揺れる。
恐らく弓使いだろう。
だが、その柔らかな微笑みと甘い顔立ちにはまるで王子か貴族のような気品が漂っていて、とても戦う姿なんて想像できない。
けど、正直一番話が通じそうと思った。
クズは論外だし、黒髪の少年はイッてる感じだし、俺を助けてくれた男は情はありそうだけど顔が怖い。
「うるせー、お前がこの世で一番最低だクソ野郎」
チェルノと呼ばれた少年は、弓使いの青年に視線を向けることもなく不気味な笑みを浮かべたまま淡々と辛辣な言葉を放った。
こわっ……!
笑ってない目がさらに闇の色を濃くしている。
「ふふ、チェルノのこの世で一番になれるなんて幸せだなぁ」
弓使いの青年はへこたれることなく笑顔でチェルノの言葉を受け流す。
どんだけポジティブ解釈だよ……。
ある意味羨ましいほどだ。
「……ところでお前、こんなところで一人で危険だ。親とはぐれたのか?」
黒髪の男が無表情のまま訊ねてきた。
こちらを心配しての優しい問い掛けだが、男の醸し出す威圧感や大きな体のせいで尋問のように聞こえるから不思議だ。
つーか、親とはぐれたって……、子供扱いかよ!
自分が大きいからって調子乗るなよ!
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